遺言書が必要となる場合

特に遺言書が必要となる代表的なケースと、遺言書が必要となる理由についてご説明させていただきます。以下のような場合、遺言書さえあれば、相続人全員での遺産分割を協議をする必要がなくなり、遺言書の内容に従って相続手続きを行うことができます。

不動産(土地や建物)が相続財産にあるとき(特に、相続財産の評価について、不動産の占める割合が大きい場合)

夫婦間に子供がいないとき(推定相続人が配偶者と兄弟姉妹のとき)

③相続人の数が多い場合、仲の良くない相続人や、疎遠のそうぞくにんがいる場合

④先妻の子供と後妻がいる場合

⑤障がいがある子供がいる場合、配偶者が病弱な場合

⑥推定相続人の中に、認知症や判断能力に心配がある人がいる場合(また、将来そのようになる可能性がある場合)

①不動産(土地や建物)が相続財産があるとき

不動産は、複数の相続人による共有で相続されると、都合の悪いことが起こります。

共有になると、共有者間での考えの相違などから、不動産の売却や管理ができなくなることがあるためです。

そのため、一人で(単独で)不動産を所有することが望ましいといえます。

しかし、不動産は、財産としての価値が高く、相続人の間で利害が対立します。

また、不動産は、預貯金などと異なり、分割することができません。

そのため、不動産をだれが相続するかを巡って、相続人の間での遺産分割の話し合いがまとまらないことがあります。

特に、相続財産のうちで、不動産の評価の占める割合が大きい場合には、遺産分割の合意が期待できなくなります。(不動産を相続する相続人以外の他の相続人に、不動産にかわる預貯金などをあてることが困難となるからです。)

②夫婦間に子供がいないとき(推定相続人が配偶者と兄弟姉妹のとき)

配偶者と兄弟姉妹とは交流があまりないことがあり、遺産分割の合意が困難なケースがよくあります。

また、最近は住所がかなり離れていることもあり、競技自体も大変です。

さらに、遺産を巡って、利害が対立することが多いといえます。

そして、兄弟姉妹には、遺留分がないため、遺言書の内容の通りに遺産相続をすることができます。

そのため、残された配偶者の生活を保障するため、この場合は、遺言書が特に必要といえます。

③相続人の数が多い場合、仲の良くない相続人や疎遠の相続人がいる場合

相続人の数が多いと、それだけで遺産分割の話し合いが煩雑・困難になります。

遠方の相続人や疎遠なそうぞくにんがいることが多くなり、話し合いがスムーズにすすまなくなります。

特に、海外居住者がいる場合は、話し合いや手続きが著しく困難となる場合が多くなります。

また、相続人の中に仲の良くない相続人がいる場合には、話し合い自体が困難となり、遺産分割の合意ができなくなることが予想されます。

④先妻の子供と後妻がいる場合

先妻の子供と後妻の間では、遺産分割の話し合いができないことが考えられます。

実際、交流がなく、一度も会ったことがないといったケースも多くあります。

こうした場合には、話し合いがまとまることは通常は期待できなくなります。

さらに、相続をめぐって、深刻な利害の対立からトラブルになり、さらに裁判にまで発展することもあります。

⑤障がいがある子供がいる場合、配偶者が病弱な場合

障がいをお持ちの子どもや病弱な配偶者の将来の生活の支援や保障を図るため、遺言の中で、家族を守るための具体的な方策を立てることが必須となります。

この場合には、遺言書を作成するとき、自分だけで遺言の内容を考えるのでなく、家族とも相談し理解を得て判断能力おくことも必要です。

家族全員で、障がいを持つ子ども病弱な配偶者を守ることが必要となるからです。

⑥推定相続人の中に、認知症や判断能力に心配がある人がいる場合(また、将来そのようになる可能性がある場合)

認知症で判断能力が低下しているご高齢の相続人、障がいがあるため判断能力に心配がある相続人がいる場合、また将来そうなる可能性がある場合には、遺言をしておくことが特に必要となります。

このような相続人の方がいる場合、本人の代わりに遺産分割協議に参加する、成年後見人を家庭裁判所に選任してもらうことが必要となる場合があります。(遺産分割協議を行うには、本人に判断能力があることが必要になるからです。)

成年後見人が選任されると、遺遺産分割協議に家庭裁判所が関与することになります。その場合、成年後見人家庭裁判所の意向により、遺産分割協議の内容に制約が生じてしまい、また相続手続きが複雑になり、大幅に時間もかかってしまいます。

遺言書さえあれば、相続人全員で遺産分割協議をする必要もなくなります。

また、判断能力に問題がある相続人が財産を相続するとすると、その後の相続手続きなどに支障が生じます。

そのため、その点を考慮に入れて、遺言で財産を承継する相続人を決めておくことが必要です。

この場合も、遺言書があるかないかで、相続手続きが円滑にできるかどうかが大きく左右され、遺言の必要性が特に高い場合といえます。

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